2. 創価学会のカルト性の源流

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前回、創価学会がもつカルト性について説明しました。今回は、創価学会のカルト性がいったい何に由来するのかを説明したいと思います。

創価学会は「日蓮の教えを正しく広める唯一の団体」を自称しています。よって、創価学会を知るためには日蓮という人物を知る必要があります。

日蓮鎌倉時代の僧侶です。当時の日本は飢饉・疫病・内乱などによって情勢が不安定でした。そこで当時の日本人は、来世に阿弥陀仏の浄土に生まれ変わることを説く念仏や、僧侶の祈祷によって厄災を治める真言などの他力依存的な仏教を信仰し、これらに救いを求めていました。社会情勢が不安定になると、こうした他力依存的な信仰が人々に支持されることは、宗教社会学的にもよく言われていることです。(※念仏や真言は、一概に他力信仰とは言えないのですが、これについては別の機会に説明したいと思います)

これに対し日蓮は、仏に救いを求めるのではなく自らが仏となって人々を救うこと、そして、来世に浄土を求めるのではなく現世に浄土を実現することを説きました。日蓮が広めた「南無妙法蓮華経」には、「万人の成仏を説く法華経の教えを信受します」という意味があります。

日蓮のこのような力強い教えに、武家階級を中心とする多くの人々が賛同し、彼らは日蓮とともに教えを広めていきました。彼らは、従来の仏教の在り方を厳しく批判したため、他宗や幕府から数々の迫害を受けました。

日蓮の死後、教団はいくつもの宗派へと分裂していくのですが、大別すると、日向を祖とする日蓮宗(身延派)と、日興を祖とする日蓮正宗(富士派)の2つに分かれます。日向と日興はともに日蓮の直弟子です。

2つの宗派の最も大きな違いは、日蓮宗が釈迦を本仏(根本的な仏)とするのに対し、日蓮正宗日蓮を本仏とし、釈迦を超える存在として尊崇することです(日蓮本仏論)。また、日蓮正宗は「血脈」という考え方を重視します。これは本仏である日蓮の究極の悟りが、途切れることなく歴代の法主(僧団の最高指導者)に受け継がれていくという考え方です。これによって、日蓮正宗では、本仏の悟りを唯一受け継ぐ絶対的な指導者として法主が仰がれるようになりました。

創価学会は、1930年に日蓮正宗の在家信徒団体として発足しました。(※当時は創価教育学会)。戦後、創価学会は猛烈な勢いで信徒を獲得していきましたが、1991年に日蓮正宗から破門されました。破門の主な原因は、創価学会が在家中心主義的な考え方を主張したために僧侶を主軸とする日蓮正宗の伝統的な考え方と相容れなくなったことにあります。

その後、創価学会は独自に勢力を拡大していくことになるのですが、「日蓮本仏論」や「血脈」といった考え方は日蓮正宗からそのまま受け継ぎました。そして、「歴代法主の絶対性」は「三代会長の絶対性」へ、「法主の血脈」は「師弟不二論」や「師弟の血脈」として換骨奪胎され、創価学会の中心的な思想となったのです。創価学会が三代会長の絶対性を強く主張するのは、こういった経緯によるものです。

もともと日蓮正宗は、自らの教えの絶対性・純一性を強く主張する宗派だったので、その伝統は創価学会にも受け継がれています。このことは、同じく日蓮正宗の元在家信徒団体である顕正会にも当てはまります。 

 

ここまでの内容をまとめると、

1. 日蓮は旧来の仏教を批判し、万人が仏になる教えを説いた

2. 日蓮の死後、日興を祖とする日蓮正宗は「日蓮本仏論」と「血脈」の考え方を採用した。

3. 日蓮正宗の上記の思想は、換骨奪胎されて創価学会に受け継がれた。

となります。

 

日蓮正宗創価学会が激しく対立する理由は、両者がともに日蓮の教えを「血脈」として正しく継承していることを主張しているからです。しかし、そもそも日蓮の思想には「血脈」の考え方はありません。日蓮は、あくまで「経文と道理に即して教えが正しいか否かを判別する」という考え方を採っていました。現在、日蓮正宗の教義も創価学会の教義も、日蓮の元々の教えから大きく変質していることが文献学的にも明らかになっています。真蹟の存在する日蓮の著作に「本仏」や「血脈」という語が全く見られないことも今日ではよく知られています。しかし、日蓮正宗にも創価学会にも、こうした学術的な成果に対して真剣に取り組む姿勢は全く見られません。彼らは、互いに自教団の考える「正しさ」をぶつけ合って「正統派争い」をしているだけなのです。

創価学会が掲げる目標の一つに「世界の宗教間対立をなくすこと」があります。ですが、身近な宗教間対立すら解決できない宗教団体に、果たしてそれが実現できるでしょうか。私にはとてもそうは思えません。

結論としては、創価学会のカルト性は日蓮正宗で形成された「日蓮本仏論」と「血脈」の考え方に起因すると言えるでしょう。しかし、日蓮本人にも自らの教えの絶対性・純一性を主張する考え方が顕著であるため、日蓮こそが創価学会のカルト性の元凶だと主張する人もいます。私の個人的な意見としては、日蓮の「経文」と「道理」を重んじる姿勢は、カルトの信奉者というよりも現代でいう科学者の姿勢に近いと感じています。例えば、日蓮は開目抄で「智者にわが義破られずば用いじとなり」と述べ、「自分以上の智者に自分の教えが論破されることがあれば自分の教えを捨てる」という意思表明をしています。日蓮がもしカルトの信奉者であれば、こうした言葉は彼から出てこないと思います。

  

次回は、日蓮正宗創価学会の教義の共通点についてさらに詳しく見ていきたいと思います。

 

※画像は日蓮正宗大石寺三門

 

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