21. 五重の相対の現代的解釈0(導入)

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こんにちは。いつもありがとうございます。

 

今回から、五重の相対について説明したいと思います(説明というより私の考えの紹介と言った方が良いかもしれません)。

 

五重の相対とは、日蓮の教え(南無妙法蓮華経)があらゆる思想の中で最も優れているということを5段階の思想比較によって明らかにするというもので、日蓮門流における教学の中でも特に重要なものとして扱われてきました。

 

しかし、現代においては、五重の相対は時代遅れな比較宗教学と見なされ、その有効性が疑問視される傾向にあります。

 

確かに、日蓮が生きたのは鎌倉時代であり、彼が知り得た情報は限られています(例えば、彼はキリスト教についての知識はなかったと思われる)。しかし、それでも五重の相対は、現代においても大きな有効性をもち、なおかつ時代を問わない普遍性を備えた思想比較であるというのが私の考えです。

 

まず、五重の相対の内容は以下の通りです。

1. 内外相対{内道(仏教)と外道(仏教以外)を比較し、内道が優れていることを明らかにする}

2. 大小相対{仏教の中で、大乗教と小乗教を比較し、大乗教が優れていること明らかにする}

3. 権実相対{大乗教の中で、権教(仮の教え、法華経以外)と実教(真実の教え、法華経)を比較し、実教が優れていることを明らかにする}

4. 本迹相対法華経の中で、本門(前半14品)と迹門(後半14品)を比較し、本門が優れていることを明らかにする}

5. 教観相対(富士派では種脱相対)法華経本門の中で、教相(文上)と観心(文底)を比較し、観心が優れていることを明らかにする)

 

以上の5段階の比較によって、少なくとも日蓮が知り得た思想をすべて網羅し、それらの優劣を一定の基準に従って合理的に判別することができます。

 

今回のシリーズでは、日蓮遺文をそのまま解釈するだけでなく、現代の学術的成果なども踏まえることで、五重の相対を現代人にも通用する形で説明することを試みたいと思います。

 

次回は、第1の内外相対を詳細に説明します。

 

※画像は法隆寺の五重の塔です。